今回のアルバムレビューは”Mr.Big”の1989年発表のデビューアルバム「Mr.Big」を紹介します。

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”Mr.Big”はご存じの通り、"Talas"、"David Lee Roth BAND(DLR BAND)"で名を上げた世界最高のBassistである”Billy Sheehan”と「Musician's Musician」と呼ばれる超絶テクニシャン集団”Racer X”のGuitaristであった”Paul Gilbert”が結成したバンドということで、デビュー前から注目を浴びていました。

"DLR BAND"での”Steve Vai”と”Billy Sheehan”の激烈プレイ、"Racer X"での”Paul Gilbertと”Bruce Bouillet”による超絶ツインギターのイメージが強すぎて、どれだけ凄い演奏が聴けるのだろうか?とワクワクしていたHR/HMファンも多かったと思いますが、音自体は意外なほど普通でした。

同時期に”John Sykes”率いる"Blue Murder”、”Jake E Lee”が結成した”BADLANDS”と「Blues」回帰の流れもありましたから、ある程度想定できた流れではあったのですが、最初は期待ハズレと思った方も多かったと思います。

しかし、これは誰が何を言おうと「Blues」をベースにしたメロディックHRの名盤だと断言します。”Eric Martin”の情感溢れる素晴らしいVoを活かす、楽曲の良さ、テクニックに裏打ちされた演奏、これらが一体となって1枚のAlbumを完成させたことは奇跡的ではないかと思います。

1曲目は『Addicted to That Rush』。



スピード感溢れ、特にLiveでは盛り上がる曲です。
”Paul Gilbert”と”Billy Sheehan”の掛け合いプレイに感服されます。パワフルながらもメロディと情感をしっかりと伝える”Eric Martin”のVoは凄いです。一曲目としては最強ですね。

2曲目はミディアムテンポでリフ重視の『Wind Me Up』。



地味な部類の曲ですが、「Raw Like A Sushi」とかのバージョンを聴くとカッコイイんですよね。

3曲目も同系統のミドルテンポのブルーズソング『Merciless』。



唸るベースと心地よいギターリフ。クセになる曲ですね。

4曲目はハードバラード『Had Enough』。悪くないです。ちょっとミドルテンポのリフ主体の楽曲が続いた中で、良いアクセントになっていると思います。ちょっと違和感もあるのですが、”Billy Sheehan”のベースがバックで唸ってます。



続いて、『Blame It on My Youth』。



これは良い曲ですねえ。2曲目、3曲目と系統としては同じようなミドルテンポのリフ曲ですが、演奏を圧倒する”Eric Martin”のVoが痛快です。Liveなんかだと一段とVocalの表現力の豊かさが伝わってきます。ブルーズロックの良さが詰まっていると思います。

そしてLiveでは”Led Zeppelin”のギターフレーズからスタートする『Take a Walk』。これも典型的なブルーズロックですが、渋くてカッコイイですね。



そしてバラードっぽい雰囲気のミドルソング『Big Love』。



地味なイメージかもしれませんけど、良いメロディが沁みます。

8曲目で本作のハイライトとも言える『How Can You Do What You Do』。



これはメロディックHRの名曲と言って良いでしょう。バンドの方向性を考えれば仕方ないとは思いますが、Liveで聴きたい曲ですね。美味しいメロディがたっぷり詰まっていて、”Eric Martin”のVoがその魅力を更に引き立ててくれている感じがします。

そして、こちらも名バラード『Anything for You』。



”Mr.Big”はヒットした『To Be With You』、『Just Take My Heart』などバラードも魅力ですが、その中でも良い出来だと思います。”Eric Martin”はやっぱり上手いなあ。

本編ラストはこちらも名曲『Rock & Roll Over』。



8曲目ほどスピード感はありませんが、こちらもカッコイイブルーズベースのハードロックに仕上がっています。”Billy Sheehan”のベースも相変わらずうねりまくってますが、”Paul Gilbertl”のギターもフレーズがなかなか良いんですよね。

そしてボーナストラックの『30 Days In The Hole』。”Humble Pie”のカバーですね。まあ、演奏しているのが楽しそうですね。正直、パッとしません。

やっぱり聴き所は後半ですかね。何度聴いても飽きないですね。

次作「Lean Into It」も名作と言って良いでしょう。「Mr.Big」と比べるとやや楽曲差が大きいかなと思いますが、逆に代表曲、名曲といえる曲が多いかもしれません。個人的に好きなのは『Green-Tinted Sixties Mind』ですかね。この曲を「HM/HR」の範疇で語って良いのかどうかは微妙ですが、良い曲です。

その後、”Mr.Big”は何枚ものAlbumをリリース。”Paul Gilbert”が脱退し、”Richie Kotzen”を迎え、Albumを作り、オリジナルメンバーで再結成し、今も活動を続けていますが、3rd Album以降は全く興味を失ってしまいました。

某専門誌では何度も表紙を飾り、何度も特集が組まれていますが、ピンとこないですね。楽曲の質的低下によるものとしか思えません。それぞれのソロを聴いても全然ピンとこなかったので予想通りなんですが、なんか残念な気がします。相変わらず”Eric Martin”のVoも演奏も良いんだけどなあ。”Richie Kotzen”在籍期の『Shine』以降、全く良い曲に出会えていない感じが・・・。”残念”

【2016年9月追記済】

Mr Big
MR.BIG
Atlantic / Wea
1994-06-16


リーン・イントゥ・イット
MR.BIG
ワーナーミュージック・ジャパン
2015-06-24


グレイテスト・ヒッツ
ミスター・ビッグ
ワーナーミュージック・ジャパン
2004-08-04


Big, Bigger, Biggest
Mr. Big
Atlantic UK
1996-11-28


Lean Into It
MR.BIG
Atlantic / Wea
1994-07-13