今回のHM/HRレビューは”David Lee Roth”の1986年発表の1st フルAlbumである「Eat 'Em and Smile」を紹介したいと思います。

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”Van Halen”の希代のフロントマンであった”David Lee Roth”がソロデビューしたのは衝撃的でした。ミニアルバムの「Crazy from the Heat」が1985年に発表されましたが、全曲カバーの企画色の強いアルバムでしたが、彼のハードロックの枠に収まりきれない音楽的な嗜好が反映された内容でした。”The Beach Boys”のカバー『California Girls』、”Irving Caesar”のカバー『Just A Gigolo』がヒットしました。

そのヒットで確信を持ったのか、”David Lee Roth”は1985年に”Van Halen”を脱退します。

しかも、”David”はミニアルバムと違い、完全にハードロックスタイルで”Van Halen”とガチンコ勝負を仕掛けるのです。更にバックは元”Frank Zappa Band”、”Alcatrazz”のスーパーギタリスト”Steve Vai”、元”Talas”のスーパーベーシスト”Billy Sheehan”、セッションミュージシャンで凄腕ドラマーの”Gregg Bissonette”と史上最高のスーパーバンドを結成したのです。

彼らの才能が結集したAlbumこそが、「Eat 'Em and Smile」です。

特に凄いのは例えば何の変哲もないHRナンバーのはずが、”Steve Vai”と”Billy Sheehan”の超絶バトルにより、トンデでもない凄みを与えられていることです。正直、曲を聴くというよりは彼ら二人の卓越した演奏を聴くためにアルバムを聴いているというのは適切な表現かもしれません。

1曲目はシングルカットされた『Yankee Rose』です。最初の”David”と”Vai”のギターとの掛け合いでスタートします。これは凄いですね。曲は何の変哲もないHRですが、常に唸りまくっている”Billy”のベースと曲に独特のタッチで絡みつく”Vai”の変態的なギターが強烈です。完全にノックアウトされます。

2曲目は”Talas”のカバー『Shy Boy』です。これは名曲です。Mr.Bigも後にLiveでカバーしてましたね。でもこのVersionは凄いです。本作でNo.1のスリリングな演奏が楽しめます。”Gregg”のドラムも良いですね。

続いては『I'm Easy』です。カバーですね。2分強のオールディーズっぽいロックナンバーで”David”の選曲でしょう。ハードロックではない、軽い感じの曲なんですが、”Vai”のギターは相変わらず暴れてます。

4曲目はブルージーなロックナンバー『Ladies' Nite in Buffalo?』。これはカッコイイですね。こんな典型的なブルーズロックを劇的に仕上げているバンドは凄いです。

A面ラストの5曲目は『Goin' Crazy!』です。これは明るめのHRナンバーで”David”の本領発揮ですね。シングルカットもされましたが、演奏も良いですが、”David”のVoの魅力が十分に出ていると思います。なかなか良い曲だと思います。

そしてB面に入ります。『Tobacco Road』です。これもカバーですね。こちらもオールディーズに思えないアレンジで爆発してます。

7曲目は『Elephant Gun』。これはブギですね。強烈な演奏が凄いです。シンプルな楽曲なので、逆に複雑な演奏が全面に出ており、楽しめます。

そして、『Big Trouble』です。これも土着的な何の変哲もないロックナンバーですが、強烈な演奏が踊っています。特に”Billy”のベースは聞き所ですね。

9曲目は『Bump and Grind』。やや地味ですね。バックは凄いですけど。

ラストは『That's Life』。陽気なバラードチェーンですね。スィング感があって、少しジャジーな感じもします。”David”のVoが良い味を出してます。大団円という感じですね。

3分前後の曲がほとんどで、トータル31分の短いアルバムでいろんなタイプのアメリカンロックが収録されているので、スカッと聴けますが、バックの演奏を聴き込まずにはいられなくなるので、意外に聴後はボリュームがあるように感じてしまいます。

同一メンバーで次の「Skyscraper」も制作しますが、既に”Billy Sheehan”は”David”のコントロールで、やる気を失っており、良い曲はあるのですが、バックの演奏の音量も抑えられ、やや残念な仕上がりになりました。”Vai”のギターは相変わらず凄いですけど、。

従って、本作が奇跡の作品として孤高の輝きを放っています。

どんなギターインストのテクニカルなアルバムよりも、凄いギター、ベース、ドラムが聴けるこのアルバムは一生聴き続けます。音楽的変化がいくらあっても、”Steve Vai”は僕にとっての一生のギターヒーローです。

Eat 'em & Smile
David Lee Roth
Warner Bros / Wea
1994-08-04